弁No.11 大学の師走
弁No.11 これまでは、年度末と言えば、2月下旬になればおおむね期末試験を始めとする各種の入学試験や、論文審査、新規人事の事務的なことも終わって、少しは研究のために時間を割くことができたのですが、ついに、まったく春の自宅研修もない時代になってしまいました。もとより、夏休みも昨年などは事実上、ほぼ皆無でした。2004年4月に独立大学法人になってから、大学の事務、とりわけ庶務掛からの教職員向けの電子メールによる通知は、21時とか23時のタイムスタンプ、そして土日のタイムスタンプのメールもたくさんあって、おそらくは労働基準法違反の猛烈なサービス残業が行われています。教員間の連絡も、今年は、深夜23時や24時は珍しくなく、多くの同僚が午前1時、2時、3時まで起きて仕事をしているのがわかります。土日には多くのメーリングリストでの発言が結構途絶え、個人的メールも届かなくなっていますが、大学業界は別世界で、土日メールは普通のことです。他大学の誰それが倒れた、という話もメーリングリストや風の便りで入ってきます。壮絶な時代環境になりました。文字通り、師走です。かく言う私も、書けなくて最終的にお断りした論文がいくつも出てきて、ここ数年は恥ずかしい限りです。
研究面での論文稼ぎ時のはずの3月がなくなり、4月中旬過ぎまで民事、少年、国選刑事事件の法廷が入っていて、いろいろな調べ物や打ち合わせ、拘置所や少年鑑別所通いなどで、相当の時間を奪われていきます。今は、すべてが勉強ですし、知らない世界の出来事が多くて、ためになっていますが、これが営業となると、ほとんどが時間の持ち出しの仕事ですから、生活は成り立ちませんね。どう考えても現時点では大幅な赤字の仕事です。 論文を書いたり、講演をしている方が経済的にはずっとよいようです。しかし、法学研究院の教員だけからなるわが法律事務所は、独立採算。せめて事務所の運営経費や事務員さんの給与の一部くらいは私も事務所に持ち帰らなければならないわけで、研究室経費、庶務的事務、水光熱費を自分で稼がなくてよい教員は、ある意味ではラクチンなのかもしれません。わが事務所にあっては、参加している個々の弁護士は今のように無報酬(それどころか持ち出し)でも、本当に事務所自体が維持できるのかどうか、いささか心配な昨今です。