行政・自治No.8 ミヒャエル・エンデじゃないが、別の意味で、「時間どろぼう」
行政・自治No.8 多くの役所・大学では、私の知る限り、電話は今でもアナログです。交換機を経由してのゼロ発信であることはともかくとして、電話機の形だけはプッシュ式でも、いわゆるデジタル回線のピポピポではなく、かつ、受話器からは、ジージーと、のどかな音が聞こえます。そして、相手が出ない、本人不在、間違いダイヤル、その他の事情で、メモ帳や電話番号表、住所録などを見ながら、また市外局番から電話をかけ直している風景はざらです。
今から20年前、ドイツ・バイエルン州の内務省で、1970年代に行政の簡素化・機械化に努めた官僚 ルートヴィッヒ ヴィーデマン(Ludwig Wiedemann)氏に会いました。彼は、パソコンに向かって、クリック一つで、電話をかけていました。日本では、電話機ごとに登録できる短縮番号の機能すら普及していない時代のことです。正直、その「クリック一つで電話」ができる能率性に驚きました。衝撃的でした。彼は、官僚といっても、いわゆる上級職の方で、総合大学卒の高級職ではありません。また、彼が行政簡素化に尽力したのは、彼の30歳代のときですが、数々の行政の能率化に貢献したのです。
翻って、21世紀に入った日本。今でも、ほとんどの役所・事務所・研究室で、プッシュボタンを押す光景が見られますが、いちいち電話をかけ直しているコストは、私の勤務する大学辺りでも、人件費で計算し直すと年間数千万円では収まらない時間を無駄にしているでしょう。
大規模自治体では、電子メールの登録アドレスが100件を超すと、自動的にアドレス帳自体が消去されるところもあるといいます。事務能率という点からは、未登録単語や長い文字列の短縮読みによる辞書登録機能をまったく使えない自治体も少なくないようです。私の場合、1万1千語の単語登録をしています。わずかに「ひらがな2文字」でたいていの専門用語も出ます。郵便番号付きの自宅の住所も、ひらがな2文字で、漢字版、英語版がでます。「実家」と打つと、郵便番号付きで、最近自治体名が変わった長ったらしい住所も1発です。ちなみに、「でふぁ」と打つと、大学研究室、法律事務所、自宅、外国向けの国識別記号付きの最低4種類の電話・ファクス番号が、漢字変換機能として使えます。
多くの事務部門で、毎日、自治体名から、自治体所在地まで、手で打っている姿を見ると、「人件費を戻せよ」、と言いたくなります。
同じことは電話にも当てはまります。オートダイヤル機能を使えば、クリック一つで、間違いなく電話をかけることができます。私の場合、2000件近くの個人や企業・組織・団体の住所などのデータが、自宅と勤務先の双方とも入っています。これなくしては、事務能率は上がりません。しかし、アナログの大学研究室では、あと10年は使える見込みがないでしょう。ファクスもパソコンから直接送る方が、楽な上に、安いし、何よりもきれいな画質で送れますが、これも大学では使えません。
あまりに、オートダイヤル機能が使われていないせいか、私のお気に入りの「筆まめ」では、2005年版から、この機能が削除されたと聞きます。先般、法律事務所で導入するために、大規模電気店に依頼して本社在庫を調べてもらったところ、わずかに1セットだけ、2004年版の在庫があったそうで、無事に、オートダイヤル機能付きの住所管理ソフトが入りました。
一流の民間企業でも、朝から晩まで、一つ一つ、プッシュ・ボタンを押しているのでしょうか? 公務の現場では、行財政改革の一環として、もっと時間コスト意識を持って欲しいものです。この程度のことができないとしたら、その理由は、IT技術のどこに論点があるからなのでしょうか? セキュリティ?
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