« 2006年2月 | トップページ | 2006年4月 »

2006年3月の記事

2006.03.28

『判例百選』シリーズの引用判例集

いままで、各年の重要判例シリーズと若干の個別分野シリーズを別とすると、各法分野の『判例百選シリーズ』で解説対象となる裁判例は、最高裁判決(決定)に限られ、その出典は、原則として民集刑集のみだったように思います。そこで、通常は手元においていないのに、無理矢理、民集・刑集から引用するわけです。しかし、民集・刑集の本物を見たことのある法学生はどれほどいるのでしょうか。久しい前から、私の場合には、『行政判例百選』の第4版(1999年刊)の前から、『判例時報』、『判例タイムズ』の号・ページも挙げていただくようにお願いしていたのですが、今回、第5版から実現することになったようです。ゲラ(校正)刷りで確認しました。ただ、今回は、解説の中で使っていた西暦元号に直されているようです。文部科学省への最近の提出物も、外国で出版した本や論文のデータであっても、出版年を昭和や平成に直さなければ受け付けてもらえないのですが、何か、グローバル化というのとは反対の復古調を感じてしまいます。

| | コメント (1) | トラックバック (1)

2006.03.26

情報に恵まれた中央(?)=東京での「入門講座」

 九州での「自治体法務入門講座」の案内をいろいろなルートで一斉公開したところ、東京の方からメールをいただきました。

…… 引用 ……
From: Date: Sun, 26 Mar 2006 16:03:28 +0900
To:
Cc:
Subject: はじめまして

木佐 様

はじめまして
東京都○×市役所の▲▼と申します。
九州自治体法務研究会の「自治体法務入門講座」
のようなものが東京にあるといいなあと思いました。
九州の方が羨ましいです。

講座を受けることができないので、『自治体法務入門
〔第3版〕』(ぎょうせい)を拝読させていただくことにします。

…… 引用、おわり ……

 東京って、行政法や地方自治法の研究者も数え切れないほどいて、自治体法務の基礎を知る機会など無限にあるのではないか、と思っていたのですが。

 1995年に北海道で「地方自治土曜講座」が、その後、各地で講座や研修が開かれ、九州でこのような全自治体職員に向けられた講座が用意されたのが2004年。10年のギャップがありますが、ひょっとして東京はエアポケット? まさか、そんなことはないはずですよね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006.03.25

2006年度<自治体法務入門講座>のご案内

 九州自治体法務研究会がボランティアで開催している<自治体法務入門講座>を2006年度も開催することになり、約3カ月にわたり、運営委員10名余で議論してきました。

 プログラム申し込み要領につきましては、このホームページのトップから、または、研究活動のコーナーから、入ってください。

 新年度は、後援団体も、熊本県市長会熊本県町村会鹿児島県町村会熊本日日新聞社自治労熊本県本部九州大学大学院法学研究院(順不同)と倍増し、特別講座の講師は別として、会員が自発的に担当する講師活動もやや板についたといいますか、順調に増えてきて、今回は数名の候補者が登壇しないことになりました。九州各県などで入門的な法務研修の需要があるようでしたら、派遣要請に十分お応えできるのではないか、と思います。関係者にご連絡ください。もとより、私宛でも結構です。

 完全に勤務外での手弁当による企画ですので、ホテルの結婚式サービスみたいなスマートさは期待しないでくださいね。2004年末にあったこの研究会の忘年会の席で、次年度の入門講座の廃止(中止)案を唱えたのは、研究会代表である私だけでした。他の運営委員の熱意、受講者の聴講意欲に負けました。

 会場の収容能力の関係もありますので、申し込みはお急ぎください。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2006.03.23

弁No.60 韓国の権利救済制度で、また打ちのめされてきた

弁No.60 1週間ほどブログが開きましたが、この間、韓国のある私学の創立60周年記念講演に招待され、お話しをする機会に恵まれました。この1年度は、ドイツの財団から2ヶ月間滞在招待、ドイツの大学から1週間のシンポジウム共催による招待、台湾の司法院(憲法裁判所)からは国賓として5日間の招待を受け、年度の締めくくりには韓国からも招待をしていただくという、自分にとっては例外的に大きな「国際年」でした。

 何度も行っている韓国ですが、それでもショックは大きかったです。立ち並ぶ高層マンションの1戸当たりの平均延べ床面積が33坪くらいであると聞いてまずは軽いショック。街中の自動車もずいぶん立派になりました。

 わずか半日しかなかった平日には、プサンの裁判所を訪れ、行政事件も扱う法廷の中まで入れていただき、全口頭弁論が録画され「情報公開」制度によって、後から誰でも画像を見ることができる、ときいて、韓国では単なる刑事捜査の「可視化」が進んでいる、と思っていた私の頭はガツーンと殴られた思いでした。こういう録画システムがあれば、私が日本で頑張って無罪を争った国選事件など簡単に「えん罪」事件であることがばれるでしょう。

 プサン市役所で聞いた合議制の不服審査制度、とりわけ7名で行う公務員の不服申立事件の審査委員の過半数以上が大学教授や弁護士で占められているという事実は、今でも日本で行政不服審査法の改正の必要はないと言っている中央省庁の官僚や一部研究者との感覚の違いを顕著にするものでした。この落差は言葉にできないほど大きなものになっていると実感したところです。

 実際、一自治体職員が、不服審査で試験の採点のあり方を争点として最終的には次々と勝利を収めてきた――今、日本で私がその職員の指導教員をしているのですが――のと比較すると、日本の現状は何なんだろう・・・と、深く考えさせられます。そうした職員を、プサン市の副市長が自主的勉強会を通じて精神的に支えていたとは。夕食をご一緒できたその(当時の)副市長も物静かな紳士でした。

 日本の官僚制の研究、行政不服審査制の研究は、相当、原始的なところから再検討されなければならないと、改めて肝に銘じているところです。そして、アジア各国から日本で学位を取るために来ている方達に、「日本」は教えて差し上げることがあるのかしら・・・・という不安。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006.03.15

行政・自治No.48 市町村合併の帰結

行政・自治No.48 今日(2006年3月15日)の今頃(15時頃)、要介護者3名が助け合って暮らしている私の実家で、光ファイバーの導入工事が行われています。九州からの遠隔操作で、パソコンは、東京の通信販売会社から購入、一部の部品やソフトは、田舎より格安な福岡で調達、そして、地元の方々のご協力を得て、パソコンやプリンターは、セット済み。すでにワープロなりコンピューターとしてはここ2週間ほど機能していましたが、今日をもって、田園の中の1世帯も世界につながることになりました。

 これに先立ち、母が自治体主催のパソコン教室に通ったそうです。3時間ずつ5日間の受講料が計500円、合併した市の中心部にある教室に通うタクシー代が片道2000円の5往復で2万円。合併先の自治体(出雲市)にもっとも近い地域にある私の実家でこの金額。松江市に近い地域の方などは、本庁までタクシー片道なら7000円くらいはかかるのではないでしょうか?

 市町村合併は、経済弱者にさらに負担を押しつけているようです。まがりなりに障害者年金を始め各種年金を受け取っている3名の家族も、今年は10万円を超す税金を納めなければならないとか。ここでも、政治のあり方を考えさせられます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006.03.13

『<まちづくり権>への挑戦』 その後

 ゼミで作成した『<まちづくり権>への挑戦』(信山社出版、2002年)という本がありますが、その後日談。

 2005年12月に、場外車券場の経営を予定していた福岡市内の企業が、車券場を断念した別府市を相手方として、6億8千万円損害賠償請求をしていると報道されています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006.03.12

弁No.59 裁判官のためのブログ作成講座

弁No.59 なんと、東京地裁では裁判官のためのブログづくりの講習会(正式には裁判所職員全員向けだそうです)が始まったようです。

> 実は、ブログの開き方を教わったのは東京地裁が募集した講習会でした(参加希望者抽選で有料)。つくづく裁判所も開けて来たと感じます。

 早速、覗いてみました。都々逸、ですね。かつて閉鎖された裁判官らのブログも復活するといいですが。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006.03.03

何か変だなぁ。共済組合員価格より安いネット価格

 遠距離痛勤の関係で、週に3泊程度は、福岡市内のホテルを利用しています。大体、3,000円台から4,000円台のホテルについては、スペシャリストになりました。インターネットからの格安ホテルの予約ですから、ほぼ毎晩、異なったホテルです。どこのホテルがどのような設備か大体わかります。

 昨晩おもしろいことがありました。KKRといえば国家公務員共済組合が経営するホテル。ネット上に空室があったので、直接、国家公務員共済組合の組合員ならもう少し安いだろうと電話をしたら「満室です」というフロント嬢の声。「でも、ネット上では空室ありですよ。で、会員価格はいくらですか」。聞けば、会員価格よりもネット上の宿泊料の方が安い・・・。価格の高い会員用は満室で、ネット上では安い価格の部屋がまだ空室状態。いささか理解できないことではありました。

 組合員価格が需給の変化に連動していない、ということなのでしょうね。旧・国立大学は、独立大学法人になったのに、保険証は変わりません。これも、(事情を考えるとすぐ分かりますが、表面上は)変ですねぇ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006.03.02

弁No.58 仲裁制度から見るADRの危うさ

弁No.58 今、弁護士業務の一環として、各種の民事紛争も進行中です。その中には、ADRとしてもてはやされている「仲裁」手続もあります。実際に、これに代理人として臨んでみると、論文に書けるほどのさまざまな問題があることが分かります。そして、どの仕事をしていても、時間さえあれば、行政法総論や行政救済法に問題提起できそうな論点のヤマ、まさに宝の山にぶつかるのですが、それを文献・判例の調査を経て、論文に仕上げる時間がまったくありません。ただただ、悔しいだけです。準備書面や意見書類を裁判所や仲裁機関に、指定された期日までに書くだけで、どうしても精一杯です。
 人気上昇中?のADRも、ひとつ間違うと、とても「ヤバイ」仕組みであるのですが、裁判所の判決に代わる効力を持つのですから、神経を使います。
 しかし、誰かが、もっと、こうした現場でぶつかる問題を念頭において、制度の再設計の提案でもしていかないとならないのでしょう。
 なにしろ、契約書にどのような文言で「仲裁」のことに言及しておれば、「仲裁」手続が義務化されるのか、相当数の判例をあたったのですが、その判断は容易ではありませんでした。福岡県では、これまで年に数件しか建設工事紛争審査会に持ち込まれた事件はないようですが、私の誤解でなければ、潜在的にはもっとあるはずです。契約書を注意深く読んでいたら「仲裁」事項があるものが、裁判所へ行っているケースもありそうな気がします。両当事者が契約書を十分見ないまま、裁判所に行っているケースもあるのではないかと。本来、一歩間違えば、「却下」の世界に飛び込みます。仲裁人の「専門性」も、大いに論じなければなりません。司法改革と言っても、これ一つとっても、まだ、序の口に入ったところ、という感じも持ちます。
 2003年制定の仲裁法との関係でも論ずべきことが、多数あるような気がします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2006年2月 | トップページ | 2006年4月 »