弁No.58 仲裁制度から見るADRの危うさ
弁No.58 今、弁護士業務の一環として、各種の民事紛争も進行中です。その中には、ADRとしてもてはやされている「仲裁」手続もあります。実際に、これに代理人として臨んでみると、論文に書けるほどのさまざまな問題があることが分かります。そして、どの仕事をしていても、時間さえあれば、行政法総論や行政救済法に問題提起できそうな論点のヤマ、まさに宝の山にぶつかるのですが、それを文献・判例の調査を経て、論文に仕上げる時間がまったくありません。ただただ、悔しいだけです。準備書面や意見書類を裁判所や仲裁機関に、指定された期日までに書くだけで、どうしても精一杯です。
人気上昇中?のADRも、ひとつ間違うと、とても「ヤバイ」仕組みであるのですが、裁判所の判決に代わる効力を持つのですから、神経を使います。
しかし、誰かが、もっと、こうした現場でぶつかる問題を念頭において、制度の再設計の提案でもしていかないとならないのでしょう。
なにしろ、契約書にどのような文言で「仲裁」のことに言及しておれば、「仲裁」手続が義務化されるのか、相当数の判例をあたったのですが、その判断は容易ではありませんでした。福岡県では、これまで年に数件しか建設工事紛争審査会に持ち込まれた事件はないようですが、私の誤解でなければ、潜在的にはもっとあるはずです。契約書を注意深く読んでいたら「仲裁」事項があるものが、裁判所へ行っているケースもありそうな気がします。両当事者が契約書を十分見ないまま、裁判所に行っているケースもあるのではないかと。本来、一歩間違えば、「却下」の世界に飛び込みます。仲裁人の「専門性」も、大いに論じなければなりません。司法改革と言っても、これ一つとっても、まだ、序の口に入ったところ、という感じも持ちます。
2003年制定の仲裁法との関係でも論ずべきことが、多数あるような気がします。
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