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2006年11月の記事

2006.11.30

弁No.66 忙中、忙あり

 普通は、「忙中、閑あり」なのですが。
 明日(正確には今日)から、連続3日間の国際シンポジウム。今日は外国からのゲストが到着され、とりあえずウエルカムパーティでした。かつて北大で勉強した各国の(世間語で言えば、教え子?の)方々(現在は、全員が教授)も集まってくださり、また、普段お会いすることがあり得ないような高官にもお越しいただき、フランクで楽しい懇親会でした。当然のことながら、数カ国語が入り乱れ、ときどき、混乱のあまり?相手が聞き取れない言語で呼びかけたりしています。
 私もかつて2年間の留学からの帰国直後には、北大の研究室で、ドアをノックする人に「ヤー、ビッテ」と言ったり、地下鉄では、進行方向右側に来る列車に乗ったり、感覚が狂ったものですが、今日も、あちこちで、言語の向き方が違っていておもしろかったですね。

 それにしても、こうした和気あいあいの雰囲気で前夜祭をやると、翌日からのシンポも、ホンネが出る充実したものになりそうな予感がします。外国で行うシンポなどでも同じです。

 そういう懇親会の間にも、明日から5日間の各種行事の進行計画が頭をよぎっています。

 ところが、なんと、その最中に、法律事務所から電話。某警察署に逮捕されている方から、私選弁護ですぐに駆けつけて欲しい、と。なんで木佐が指名されるのか、会ってみるまではわかりません。刑事弁護で著名な上田國廣所長と同一の事務所、というだけの理由で受刑者や被疑者の間では、この事務所所属のカケダシ弁護士も真面目に軽微な事件でも対応してくれるという評判ないしウワサが広まっていることは、初めて国選弁護事件で行った福岡拘置所で最初に被告人から聞き及んだことですが、今回は何故に?

 懇親会が終わってすぐ某署に電話したら、勾留係の電話がふさがったまま。結局、あすは、1番に距離にして車で数十分の警察署に駆けつける羽目になりました。果たして、講演会の打合せなどに間に合うのでしょうか。方向は、大学とはまったく反対です。初めての私選弁護、ということですから、今までの国選とは別の意味で、緊張感は大きくなります。単に時間がないから、忙しいから、という理由でお断りはできないですから。

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2006.11.28

行政・自治No.64 思いもよらなかった中国の地方選挙

行政・自治No.64 061128china_wahllist 中国天津市で2006年11月16日に行われた区(市地域内の区)の議員選挙の投票用紙です。本物は、朱印が押されていますが、これはモノクロのコピーです。

 私は、中国の選挙では、信任投票と思っていました。まったく違っていて、この選挙区では立候補した4名から3名を○印を付けて選ぶ選挙です。しかも、自分が推したいと思う人の名前を書く欄が設けられています。いわば「出たい人より、出したい人を」という仕組みを表現しています。

 実際には、立候補もしていない人の名前は知られていないから当選することはないのですが、次回選挙では知名度が上がることになるのでしょう。この投票用紙を見せてくださったのは天津市内の弁護士。彼の名は最上段に書かれています。来年は、日本の法曹との交流を日本で、と張り切っていらっしゃいます。選挙の前日だというのに、自らが終日、あの広大なことで日本でも既に知られている天津市の大工業開発地域を案内してくださいました。つまり、声をからした絶叫選挙戦はない、ということです。もとより、中国の選挙制度に種々の問題があるかもしれず、それは今後の勉強の課題ですが、なにがしか日本より進んだところがあるのを感じさせられた一コマでした。市内を走っても、日本的な選挙の雰囲気はありませんでした。この辺り、ドイツと似ています。

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酷似条例

これは、条例の名称ではありません。「そっくり」条例(案)が出現した、というだけの話です。「ニセコ町と酷似 千曲市「まちづくり基本条例」素案」という見だしで、新聞記事があります。「切り貼り」条例とか、「モザイク」条例、ちょっと美しいのであれば「ステンドグラス」条例はありますが、「そっくりさん」はいただけません。
 このニュースは、基本条例について長年続いているメーリングリストからいただいたものです。

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2006.11.25

骨抜き

骨抜き 骨抜きというのは、鮭のように、1本1本、毛抜きのようなもので抜かなければならないものもあって、結構、苦労がつきものです。

 ところが、最近では、法律の改正で一気に制度を「骨抜き」にしてしまう、ホネの多い魚の缶詰化のようなものが結構あるようです。

 同僚の田中孝男氏がすでにブログで言及していますが、汚職首長への賠償請求権を議会が相次いで権利放棄する議決をしているということです(朝日新聞2006年11月20日付け夕刊)。

 これは、地方自治法改正による住民訴訟制度改正(改悪?)の審議時代から指摘されていたことで、「やっぱり」というだけのハナシですが、ことの影響は、日本国内にとどまりません。

 少なくとも、私がキャッチしている範囲内では、韓国でも日本の住民訴訟の「客観」訴訟としての機能にはかなり前から注目されているのですが、このたび、中国に行って、実際に、「受けないだろうなぁ、眠る学生がたくさん出るだろうなぁ」と思いながら、中国の教授から依頼されたテーマとして「住民訴訟」に関する講演をしたら、眠っている人はほぼ皆無で、質問も多く、関心の高さに驚きました。自己の権利利益に関係なく出訴出来る、というところに着目されているのです。

 アジアでは本家・宗家・本舗・老舗・元祖である日本の住民訴訟制度が機能喪失では、立つ瀬がないです。

 講演では、今後、日本では、住民訴訟事件数も減少し、従来ほどの機能を発揮しないだろう、と言っておきましたので、予想通りではありますが、情けない姿です。

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2006.11.24

中国の公法博士課程院生の全国大会

法教育を考える

06china_dcstudent_dsc_1739 この10月と11月に、それぞれ6泊ずつ、中国へ出張してきました。実に多くの方に出会い、さまざまの経験をしました。これから、アトランダムに、その印象などを書いていくことにします。 
06china_dcstudent_dsc_1740 
 わざと、実際の旅程とは順番を違えて、硬軟取り混ぜて話題を拾っていくことにします。

 中国の大学は、はっきり言って、完全に日本の旧帝大クラスの建物より立派です(こう書くのは、日本の私立大学は美しい建物、立派な施設のところが多いからです)。訪れた全ての大学で、学内にホテルがありました。3つ星クラスの表示がされているところもありました。

 学生は、院生・学部学生ともに、日本よりは、はるかに「やる気」があります。証拠になりそうな数字上の話は後回しにします。山東省の山東大学でのことです。10月22日(日)、私は予定されていたエクスカーションに行くことはできず、日曜午前10時からの学生・院生・教員向けの講演を行いました。その後、朝の8時頃から開催されていた全国の博士課程院生の研究発表会を覗きました。2日間にわたる「第1回全国公法博士課程学生研究発表会」は、山東大学の主催。

 今回の主題は、「人権保障と権力制約」。全国の大学に呼びかけ、応募者は全員、未発表の論文を提出。それを、博士課程の指導資格のある全国の教授達が審査して優秀者が発表し、その後、討論というスタイルのようです。この博士課程の指導資格のある教授は、名刺に「博士生律師」と書いてあります。写真の通り、大変、熱気のこもったものでした。気づいたことをいくつか書きますと、

 (1)全法律系大学から応募者があったわけではありませんが、主要な大学の名が目につきました。この年代から、学術交流をしっかりしていること

 (2)超多忙で、全国的にも超・著名な教授らが、ボランティアでコメントのため駆けつけていること(一部の教授は、山東大学の学生・院生に対して講演)

 (3)40代から50代前半の教授が最先端の指導陣になっていますが、彼らは、すでに後継者養成という意識を非常に強く持っていること

 (4)博士課程院生らは、自ら多忙な研究の中で、自主的にこうした交流を持っており、それを大学当局が資金面も含めて支えていること

 (5)提出され、分厚い冊子にまとめられている論文では、大変多くの文献が引用され、アメリカ、ドイツ、日本、韓国、台湾の文献が頻繁に引用されていること(かつての中国の論文とは一変)

 これらは、非常に強い印象となっています。日本の研究者養成課程の院生に、この迫力があるかどうか・・・。ロースクール制度発足で、日本では、この「熱さ」が生まれるには、あと○○年かかるかなぁ、と思った次第。今、アジアで公法研究者を養成するには、中国、韓国、台湾へ出かけていった方が早道かとも考えているところです。

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2006.11.23

講演会案内 配布自由版です

法教育を考える  前回ご案内した講演会案内を整理しました

 福岡弁護士会員向けに用意したPDFファイル版(ただし、実際には、レターボックスへの配布になります)にリンクを貼っておきます。

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2006.11.20

講演会「中国における公務員法教育の実践」

06uchiawase_dscf1617_1 このたび、九州大学法学研究院において、下記の要領で、講演会を開催し、引き続き討論の機会を設けることに致しました。以下、開催趣旨なども含めて、ご案内します。会場設営の関係と、(早い話、椅子をいくつ、ペットボトルのお茶を何本用意するかという点から)出席を希望される方は、木佐(GDH03534@nifty.com)または田中孝男(ttnk@law.kyushu-u.ac.jp)宛てに、11月24日(金)までにお申し込みください。

 【写真】は、数時間に渡って議論と打合せを行った某所の様子です。屋上テラスの植物類や、室内レイアウトの現代的なデザインが印象的でした。左端が下記の王氏です。写真は、若干、ぼかしてあります。

 この講演会は、木佐が代表を務める文部科学省の科学研究費・基盤研究(A)(2006年度から3年間)の研究活動の初年度における問題意識共有化のための、最初の大型企画です。科研費の共同研究者らは、翌日の12月1日にも討議を行いますが、これは非公開とします。科研費のテーマは、

 「法教育を中心とした公務員養成・研修制度のアジア・ヨーロッパ比較研究

 であり、研究者はアジアとヨーロッパの6カ国から参加し、アメリカも研究対象に
入っております。

 1 開催日 2006年11月30日(木) 13:30(開始)~17:00(終了予定)

 2 場 所 九州大学大学院法学研究院 2階 大会議室
       (〒812-8581 福岡市東区箱崎6丁目19番1号)

 3 講演タイトル 「中国における公務員法教育の実践
          (日本語通訳付き。討論も通訳付き)

 4 報告者 王公義 氏  中国司法部(法務省)
         司法部研究室副主任
         司法部司法研究所副所長
         雑誌『中國司法』編集長

         九大の所在地・行き先についての問い合わせ先:
          法学研究院(庶務第三係)
          電話: 092-642-2354 

         内容について問い合わせ:木佐へ
         恐縮ですが、電話番号明示で、木佐のID(本ホームページ・トップ右上)
         までお願いします。


 5 他の国・地域からの参加者(確定)

  王公義博士 中国司法部(法務省)司法研究所副所長

  沈小英氏  中国・法律出版社主任        

  林素鳳教授 台湾・国立中央警察大学       

  趙正群教授 中国・南開大学法学院        

  文尚徳教授 韓国・翰林大学法学部        

  韓冨榮博士 韓国地方自治研究センター      


 6 一般公開による開催の趣旨

 この10月と11月にそれぞれ6泊の中国出張をしてきました。11月17日に帰国したところです。10月20日には、中国のトップエリート(公法学の教授達や司法部(日本の法務省に相当)幹部)が、法治主義や公務員に対する法的研修、公務員の法的思考のあり方について、私とほとんど同じ考え方を持っておられることがわかりました。最高裁の行政訴訟の女性裁判長との会談なども実現し、同裁判長のお考えもまた、非常にリベラルであり、考えておられる権利保護制度としての行政訴訟法とその実践の方向性にも共感しました。

 そこで、訪中以前から構想していたことではありますが、日本のトップエリート層の思考水準をすでに上まるであろう中国のトップの法治主義実践への決意や実践について直接にお話しをうかがうことになりました。すでに、司法改革分野の多くにおいて、日本が韓国や台湾からから遅れていることは、行政救済制度のみならず、最近では、刑事事件における取調べの可視化を始めとする多くの分野で顕著です。いまや、中国にも、遅れをとろうとしています。公務員らの修士課程・博士課程での履修率、履修意欲、履修生かのキャリアでの反映も、おそらく、日本は、韓国、台湾、中国に遅れをとってきたことをここ2年間の3カ国訪問で実感しています。

 中国では、国家レベルの「幹部(日本で言えば局長・部長級)から」法務教育を徹底し、今、それを地域や下級職員に及ぼそうとしています。体制の違いがあるとはいえ、日本では末端の職員には法務教育をするものの、「上」の方は野放し、というのと全く逆の方向で、法務教育の徹底と法治化を図ろうとしています。法務関連教材の開発も急速です。

 そうした一連の公務員法務教育の実践にかかわって、13億人に及ぶ中国の人口の中で法務教育の最高責任を担う方のお話しを直接に聞くことができます。王副所長は、博士の学位もお持ちで、大変、親しみやすい方です。1人でも多くの方に、生きた中国の現状を知り、日本の危機的状況に思いを致していただきたいと思います。

 12月2日(土)午前・午後には、外国からのゲストは、九州自治体法務研究会(熊本で開催)にもご出席いただき、日本での自治体職員・市民の法務に関する勉強会(自治体法務入門講座)や、自主研究会(九州自治体法務研究会)の雰囲気を見学していただきます。特に、午後には、研究会で九大で行う報告の短縮版の報告ないし、見学の感想などをお話しいただく予定です。当日の研究会では田中孝男氏も1本の報告をします。午前の入門講座では、ニセコ町の片山健也氏による特別講演「自治体改革の現状とこれから -ニセコ町の実践から-」もあります。

2日(土)午後の研究会の部では、私の司会で、私どもの中国訪問の報告(パワーポイントによる写真で)に加え、王博士から、今度は簡単に上記の報告をいただきますが 、その中国からのレポートの内容には、皆さんがびっくりされると思います。そして、意見交換をします。(この研究会は、会員限定ですが、希望者は、お申出ください。)

参加者は、当方からの参加受付確認メールを得た後、11月30日の13時頃までに九大(〒812-8581福岡市東区箱崎6丁目19番1号)に到着していただければ結構です。
(定員オーバーの場合には、お断りせざるを得ません。椅子を持ち込んでも70人までしか入れません。)

 九大への交通ルートなどは、九大のHPからも分かりますが、必要な方には、さらに分かりやすい手製のファイルも用意しております。お申出ください。

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2006.11.08

自治・行政No.63 九大で日本自治学会開催

自治・行政No.63 実に久しぶりに、昨晩、正確に言えば、今朝の2時前にブログを書こうとしたら、「メンテナンス中 しばらくお待ち下さい」というのですが、「しばらく」がいつまでか分かりません。諦めました。
 今朝は、研究室に入ってから、いったん、室外に出ようとしたら、ドアノブがポロッと落ちてきて、自分の力では、外へ出ることができなくなりました。仕方なく、今、ブログを書いているところです。

 さて、11月18日~19日に九大法学部を会場に、日本自治学会が開催されます。そのプログラムをPDFにしましたので、掲載しておきます。非常に興味あるテーマが並んでいます。私は、弁当代だけを振り込まなければならないのですが、2日分 2000円の弁当のために、銀行を探して振り込みに行かなければなりません。私の通勤途上には銀行(ATMも含めて)がないのです。振込料やそのためにどこかの地下鉄駅でわざわざ降りて振り込むことも考えると、弁当は高いですね。
 
 是非、日本自治学会の発表や討論を聞いていただきたいのですが、土日の九大近辺にはコンビニもなく、食堂もないと言える状況ですので、是非とも、事前に弁当を買ってからお越し下さい。お茶なら、自動販売機があります。但し売り切れたら、絶望的です。研究室もそうですが、特に、講義棟の方の水道からは、赤い水が出ます。お気を付け下さい。

 私は、九大内で、ほとんどいないと思われる同学会の会員ですが、今回の企画・運営にはまったく関与しておりません。一傍聴者として参加しますので、お声をかけていただいて構いません。

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