« 行政・自治No.70 尻尾の更迭 | トップページ | 「いつかある日」 »

2007.09.01

韓国のロー・スクール制度創設最新事情

 韓国の行政法専攻の教授から、日本語で、ロー・スクール創設の最新事情のニュースをいただきました。内容は、公開の許可をいただいた部分のみです。日本語としての表現に関して少し手を入れさせていただきました。

 リアルタイムで、日本のロー・スクール制度の弊害についても韓国に伝わり、検討が加えられているようです。数年前には、相当の数の法学教授らが韓国から日本に視察あるいは実情調査に来られていましたが、今、一定の方向性が出てきたようです。

===================================
韓国では7月末に「法学専門大学院設置運営に関する法律」が制定(2007.7.27 制定、9.28 施行)されました。法律施行令(大統領令)はまだ確定されていません。(立法予告中)。

法学専門大学院の設立認可を得るのは厳しいと伝われています。そのため、大学ごとに先生たちは法学専門大学院の誘致のために忙しい日々をすごしています。

韓国の制度では law schoolを設立する大学は既存の法学部を廃止しなければなりません(設立しない大学は法学部をそのまま維持しても構いません)。

そして、入学試験には法学に関するテストはありません(テストできません)(入学試験には大学の成績、法学専門大学院適性試験の成績、英語実力、面接結果、その他が測定されるそうです)。その結果、これからは法学部自体はだんだん人気がなくなるのではないかとの心配があります(法学部卒だけでは弁護士試験の受験資格がもらえませんし、 law school の入学試験に法学のテストがないですので、他の学部に比べてあまり利益がなさそうですから)。law schoolを準備していない大学はそれなりに既存の法学部の教育目標や性格を転換しようとしています。

全国的に law schoolの総入学定員は制限されます。そして、その範囲で大学ごとにlaw school設立認可がもらえるかどうかとなります。個別 law schoolの入学定員は150人以下になりそうです。限られた範囲で多くの大学に認可できるようするためだと思います。認可申請を準備している大学間の認可準備競争はもう激しくなっています。

いまの段階では law schoolの総入学定員の規模が一番の争点になっています。全国 law school 全部の総入学定員をどのくらいの規模にするかによって認可できる大学の数が決まることになりますので、大学のほうと市民団体は3,000人以上にすべきだと主張しています。逆に弁護士団体はこれまでの司法試験合格者の規模ぐらいの1,200人くらいに入学定員をしてもらいたいと求めています。(木佐による注:韓国の人口は、日本の3分の1より少し多い。約4,900万人)

将来の弁護士試験の合格者規模はまだ決まっていません。総入学定員の数は最終的には教育人的資源部の長官が law school 卒業生の7-8割が弁護士試験に合格できる程度の規模で決めるシステムになっています。いまは長官が総合的にそして慎重に検討中です。 弁護士試験合格比率はこのようにある程度きまっていますが、その規模(law school総入学定員の数と弁護士試験の合格者の数)をどのぐらいにするかは熱い争点になりつつあると思います。10月には決定されるのではないかと予想していますが。
===================================

|

« 行政・自治No.70 尻尾の更迭 | トップページ | 「いつかある日」 »

法教育を考える」カテゴリの記事

コメント

この韓国の対応は、日本の現状と比較してとても興味深いものです。どなたかコメントいただけないでしょうか、と自分でコメントしておきます。日本に即して言えば、合格者8000人体制、という感じになるのです。どのようなご意見でもいいのですが。

投稿: きさ | 2007.09.01 20:52

平成4年の夏にAIJAの総会が京都であったことがあり、韓国の弁護士と語ることがありましたが、当時は年間300人合格(日本は500人)で日本の弁護士と韓国の弁護士の給与がほぼ同じということでした。ということは当時の物価を考えると日本より弁護士の地位が3倍ほどたかかったことになります。
21世紀寸前に韓国も弁護士を急増させたので、弁護士の地位自体は低下しているようです。さて、合格者8000人体制ともなると、弁護士の地位は日本の行政書士資格レベルになりそうですね。

投稿: madi | 2007.09.06 00:06

日本の「法科大学院の乱立」を教訓に減らしているみたいですが
逆に入り口を狭くしすぎることによる弊害もあると思います。
裏口入試が横行したり、激しい受験競争が発生することが考えられます。

かといって日本のような乱立は「九大」のような状況を生むだけです。
教員不足からくる教員の激務、法科大学院の予備校化
教員内部の権力闘争、犯罪者教員のお咎めなし
教員の離脱(更に大橋・原田両行政法の教員が脱北)


木佐教授、田中准教授とともにこんな大学出るべきです
どこのロースクールも矛盾をかかえていますが、ここよりはマシです

投稿: こうへい | 2007.09.06 10:04

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 韓国のロー・スクール制度創設最新事情:

» 日誌9月9日 [Harumichi Yuasa's Blog]
自宅で仕事。 このところ涼しくなってきたので、4階建ての最上層階にある拙宅でも午前中は冷房をかけずに仕事が出来るようになった。それでも室温は常に外気温よりも高い・・・。 九州大学法学部の木佐茂男先生のブログに、韓国の法科大学院設立をめぐる最新の情報が掲載されている。 それによれば、法科大学院を設置する場合は、学部の法学部は閉じなければならないようだ。 昨日のエントリで取り上げた米倉明先生の『法科大学院雑記帳』でも、法科大学院ができた以上、法学部は不要であるとされている。 ここで考えなければならない... [続きを読む]

受信: 2007.09.09 07:59

« 行政・自治No.70 尻尾の更迭 | トップページ | 「いつかある日」 »