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2008.02.28

弁No.78 差引きすると「3万円」のセクハラ慰謝料判決

弁No.78 最近、司法試験合格者3,000人になると、弁護士の資格を得ても生活できない人がたくさん出る、ということで、法曹界(というより、弁護士界)ではマスコミ、とくに大手新聞社説の論調とも関わって大きな議論が起きています。この問題は、別途、しっかり論じなければならないし、ロー・スクールの制度設計の反省にまで戻って扱うべきものでしょう。我が国の立法過程のあり方にも触れる深刻で大きな課題です。

 ただ、弁護士としての仕事がないということの一つの理由に、クレサラ事件、多重債務事件などが減るとともに、一般の民事訴訟事件も減っているという事情もあるうようです。この点についても、何故、減っているかの総合的な議論が必要であることはいうまでもありません。

 さすがに、これはどうか、と思い保管していた新聞記事からの話題提供です。2007年11月13日付けの朝日新聞(西部本社版)によると、宮崎県警の警察官が捜査で知り合った女性にセクハラ行為を行ったことから、女性が警部補と県に慰謝料500万円を求めていた事件で、裁判所は警部補のセクハラを認め、その警部補に20万円の支払いを命じたという判決があります。他方で、その警部補は、女性が週間朝日の取材に対して「警部補に待ち伏せされた」と語って記事になった部分が「真実に反する」として名誉毀損を訴えた部分につき、裁判所は認容し女性に17万円の支払いを命じたというのです。女性は、セクハラ行為を受けて訴訟まで行って「3万円」しか認められなかったわけです。詳細な事情が分からないので、これ以上は何とも言えませんが、少なくとも、この賠償額では、弁護士費用を始めとして、二重の被害を受けたと言わざるを得ないように思います。

 名誉毀損行為に対しては、裁判官自身が名誉毀損行為を受けることが少ないためか、あまりに認容額が低く、被害者は、怨念訴訟の形態にでもならない限り、裁判を起こす気にはならないでしょう。加害者の加害得といった側面があまりにも大きいと思っています。かくて、市民の裁判離れは必至です。裁判官は、1円でも慰謝料を認めれば、慰謝されるものと思っているのでしょうか。

 弁護士過剰問題が起きてしまうのは、「裁判官の脳内革命まで含む司法改革」をやらないで、司法「制度」改革で終わらせてしまった今回の改革の限界によるものだと思っています。確かに、被害者は、当面のところ、就職難にぶつかる新人弁護士ですから、今議論が戦わされるのは大事です。

 翻って、従前の司法試験(とその当時の合格者数)で良かったのか、合格者は例えば1,000人か1,500人程度でいいのか、はたまた、これまでの弁護士は質が高かったのか、と考えると、それはまた別の問題でしょう。私自身、弁護士として、あるいは一個人として、この1年間でも従前の司法試験に合格しているひどい弁護士に数々ぶつかったことも事実です。懲戒請求をしたいと思う何人もの弁護士に出会いました(多くは福岡県弁護士会以外で)。従来の弁護士には、一度合格した後、あまりに安住できる経済的地位が保障されていたと言われても、それは仕方がないのではないでしょうか。

 同じ程度か、それ以上の時間働いている大学教員と比べてみても、意味のないことではありますが。

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