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2008.03.23

行政・自治No.83 公務員が偽の書類を作らなくてもいいように。碓井光明 『政府経費法精義』発刊

行政・自治No.83  科学研究費などが当たると、その日から私たちは犯罪者予備軍的な扱いを受けます。「研究者は違法・不当支出をするものだ、任せておけない」。実際に悪用した人がいるから、こうした事態になったことは否定できません。しかし、今の現実は、本当に使いたい研究目的に使えない、交際費や外国調査の土産も自己負担。大型研究費を取得するたびに家計の赤字が増えます。会計担当者の目から見て、少しでも(不透明な)基準に照らしておかしければ研究補助金を支出できません。自分たちの給与も、その他の資金も何を基準にどう計算されているか、ほとんど知らされることはありません。

 この融通の利かない研究補助金制度を補うために作られた民間財団などの研究補助金も、それが研究者に支給決定がなされると、大学に寄付する形で納付を強制され、科研費と同一基準でしか使用できなくなり、その補助金設置の目的とは異質な運用を余儀なくされます。加えて、大学本部によって天引き(徴収)されます。大学によっては大学の事務局・教員が一体となって、柔軟な運用をしているところもあるようなことを耳にしますが、我が大学の硬直さには、他大学の同一プロジェクト共同研究者からも、「ヒマですねぇ」、「馬鹿な仕組みですねぇ」と本当に呆れられているのが実情です。

 そうした観点から見て、待望の書が出ました。日本の公金の流れは、本当に不透明です。公務員や研究者が、偽の書類を作る必要がないための法整備と法解釈が必要です。

碓井光明 『政府経費法精義』(信山社、2008年)ISBN 978-4-7972-2524-2 です。

 碓井先生は、東京大学法学政治学研究科教授です。

 「公金の水漏れを防止するために、主要な形態の政府経費の法的検討を行った本格的著書」で、「類書はまったくないもの」(はしがきⅱ頁)と自負される通りです。「サービス残業、会計年度による制約などにも思いを致す必要があると考えている。そして、筆者は、日々献身的に公務の遂行に励んでおられる公務員の方々が、偽の書類の作成などを迫られることなく、安心して公務に専念できることを誰よりも強く願っている者の一人である」(同ⅲ頁)。著者ご自身が「破格の廉価」で刊行されることについて信山社に謝辞を述べておられますが、490頁ものご著作であり、確かに驚くべき廉価です(4,000円+税)。通読は難しいでしょうし、すぐには頭に残らないかもしれません。ですが、座右に置いて、すぐに参照すべきタイプのご労作と考えます。

 ドイツであれば、初級公務員も、旅費法、物品会計法、公務労働法など、仕事にかかわるすべての法の概説を教科書により習うのですが、私どもは行政法の専門家であるはずなのに、こうした分野には完全に無知です。伝票を見て法的な位置づけをすることさえできません。「知らしむべからず」の世界に生きています。

 全公務員が簡単に読み通せる、この本の初級編も是非、早急に欲しいと切に思います。

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