『テキストブック現代司法』の改訂版ならぬ、単なる増刷発売
2008年4月20日付けで、『テキストブック現代司法〔第4版〕』の第7刷が発売になりました。第4版は、2000年の発行ですし、その増補版である第4版第4刷は2002年の発売ですから、実質的改訂がなされないまま6年経っていることになります。昨年は、共著者である渡部保夫教授と吉野正三郎教授が逝去されました。2003年から第5版の企画をしており、その時点で、このお二人については執筆者交替ということで準備が進んでいましたが、その間、ロー・スクール設立により、残りの全執筆者が要職に就かれ(私だけが、閑職)、作業が遅れていました。
第6刷が売り切れて、長く絶版になっていたところ、今年に入って大規模な教科書採用があり、急遽、古い版の増刷が行われたという次第です。
新たに6名の執筆陣でとりかかります。第5版という形か、あるいは、心機一転して新しい書名になるかもしれませんが、来春には、第4版までで述べてきた司法改革の必要性の主張が、どの程度、実現し、どの程度未解決かを明らかにするような著作として、公開できれば、と思います。
ロー・スクール用の実定法関係の教科書は、追いかける暇がないほど、出版が続きます。しかし、司法改革なり司法制度を、きちんと知っているロー・スクールの学生も、学部の学生もほとんどいません。
私個人、司法制度・司法改革を一種の専門領域にしながら、九大に来て学生の前で、一度たりとも司法改革の話をしたことはありません。自分が力を入れている研究活動について、およそ学生(院生含む)に対する講義の場で、まったく語る時間・機会がないというのは、情けないものです。
語る場所や機会がない以上、なぜ、日本で、ある意味では、急に司法改革が必要になったのか、今、誰が、どのような考え方で司法改革を進めているのか、それをきちんと分析して、理解できるようにするテキストがやはり必要ではないか、と思います。
冤罪が多いから始まった司法への国民参加の制度に、弁護士の少なからぬ人々が反対する現実。弁護士過疎地が多いから、裁判官・検察官が少ないからという理由での法曹人口拡大が、弁護士増員による就職難問題になってしまう現実・・・それらをトータルに掴まえるテキストはやはり必要なのでしょう。
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