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2009年2月の記事

2009.02.27

借地人、借家人に補償のない用地買収を最高裁が容認

自治体法務・政策法務  最高裁は、19億円もの用地買収事案で、その用地上に600台以上のパーキングを経営していた借地人に対する補償交渉を一切することなく、なお借地人が現に事業を経営しているにも関わらず無補償で所有権者から、当該土地を買収し、更地として移転登記する行為(契約とその履行)に違法性はない、とする判決を昨年末に下しました。

 今後、借地人、借家人は、彼らが知らない間に地主や大家さんによって土地や建物が売られても仕方がない、という判断です。

 最高裁では高裁判決を維持する、いわゆる三行半の判決ですので、高裁判決の内容が決定的に重要になります。

 これまでの用地買収の大原則と実務を根幹から揺るがす大きな影響をもつ判決です。財政危機の折、自治体は補償基準によらない安い価格で土地を買い上げることが可能になるかもしれませんし、逆に、コネのある有力者には私法契約とういことで超高額での買い取りも可能となるでしょう。他方で、借地人は居座ることが可能であれば占有権を理由に用地買収をした自治体に対して居直ることも可能ですし、弱者であれば無補償で追い出されます。借地・借家人で事実上強い立場にあれば地主や大家に超高額の立ち退き料をふっかけることも許されることになりそうです。このように、「私法契約」を理由とする自由を認めた判決の影響は、これが全国での実務の原則になっていけば、きわめて大きなものとなるでしょう。

 補償基準の根本的な書き換えが、国のレベルでも、自治体のレベルでも必要になるでしょう。

 今回、被害者である当事者の方により、ブログが開設されたようですので、事案の影響の大きさからして、とりあえずご報告をしておきます。

 全国で用地買収をされている自治体職員、国家公務員、あるいは政府関係法人、地方の土地開発公社の方などは多いと思いますので、ご意見もうかがいたいと考えています。

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弁No.90 記録映画『日独裁判官物語』のテレビ放映

弁No.90 今日、自治体法務に関するメーリングリストで、私の知らない情報提供をいただきました。私の著作(学位論文でもあります)『人間の尊厳と司法権―西ドイツ司法改革に学ぶ』(日本評論社、1990年)が原作で、1998年11月に1ヶ月間のドイツでの撮影後、1999年3月に映画として完成した『日独裁判官物語』が、テレビで放映されるそうです。

> たまたまCSのTVガイドを見ていたら、3月7日は、裁判映画特集日なのですね
>(日本映画専門チャンネルHD)。
> 木佐先生が監修された(?)「日独裁判官物語」も放映されます(正確には、日付
>が変わって3/8 午前2時から)。
> TVでは、初なのでしょうか。

 テレビでは、もとより、初の放映です。この映画の全面的な監修はもとより、この映画を見るための副教材(?)の監修もさせていただきました。

 「司法制度改革」が終わりを迎えていると言われる今日、「司法改革」との違いを味わっていただきたいと思います。

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2009.02.26

行政・自治No.100 職員給与額の全面公開

行政・自治No.100 鹿児島県阿久根市の職員全員の給与額公開が話題になっていますが、自治の大原則からすると、どう考えて良いものか。

 目下、九州自治体法務研究会のメンバー間でも、議論の最中ですが、情報公開と個人情報保護の関係からいかがか、単なる悪趣味を広げるだけのものなのか。地場経済との関係で、大事な情報公開なのかどうか。

 正直、たかられることの多い田舎の(都会でも?)首長さんの給与は、首長以外の特別職の給与よりもう少し高くてもよいのではと常々思っています。さらに、首長給与は、一般職に比べてもう少し差があってもいいような気がします。パーマネントの職と、落ちればただの人になる任期制(人気性)特別職とは違いますしね。ドイツだったら、専任の首長制度の自治体であれば、差は大きいですね。責任の度合いが(本来は)違います。

 行政・自治No.100 のテーマが、こういう話題になるとは・・・

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2009.02.24

ゼミ論『福岡市のごみ有料化を考える―法的分析および政策過程・実効性の検証』をアップロードしました

 2005年度の木佐茂男・行政法ゼミの共同ゼミ論福岡市のごみ有料化を考える―法的分析および政策過程・実効性の検証』 をアップロードしました。 ファイル・サイズは、9.03MB です。

 これは、発刊当時にお送りした著名な先生から、考えていなかった論点まで扱われている、とお褒めにあずかったものです。

 最近もまとめて数冊お求めいただいた大学があります。Webcat で検索すれば、どこの大学かわかるでしょうけれど。

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2009.02.23

弁No.89 「おかえり」 といえる社会に

弁No.89 水島朝穂教授のホームページにあった、というよりメルマガで配信された記事の中で紹介されていた良い話なので、リンクを張らせていただきます。井垣康弘・元判事のお仕事の一端が紹介されています。

 ブログに書けないような話ばかり続く毎日。少しはいい話で気分転換を、という次第です。お話しはこちらをクリック。

  

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2009.02.11

行政・自治No.99 「普段着のドイツ地方議会」

行政・自治 No.99 掲載するのを忘れておりました。2008年暮れに刊行されました全国町村議会議長会の月刊誌である『地方議会人』の39巻7号(中央文化社、2008年12月号)25~29頁に書きました「普段着のドイツ地方議会」を掲載します。

 転載の許可は得ております。

 今までの公刊物に載せたドイツの地方議会関連の写真や図表などは意識的に回避しました。画像は、講演などでは上映してきたものの、地方自治関係の印刷物・出版物では非公開のものだけ10点程度に絞りました。

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2009.02.04

弁No.88 「司法改革」と「司法制度改革」の違い

弁No.88 日本司法書士連合会が発行する『月報司法書士』の2009年1月号(通巻443号)の特集の巻頭に、「法改革と司法制度改革―「制度」という言葉があった意味」を書きました。同連合会のご好意で、ただちに、私のホームページで公開してよい、との許可をいただきましたので、掲載します。

 私は、1990年代に多くの人や団体によって唱えられていた「司法改革」が、結果的には「司法制度改革」に終わり、しかも、弁護士内部というか幹部の発言や記事でも、司法制度改革は最終時期に至った、というのを見聞するにつけ、「それは、違うんじゃないの」と思ってきました。

 そうした考えの一端を、インタビュー形式で速記録を作成していただき、一応、論文的調子になおしたものが、この掲載原稿です。

 コメント欄には、反論もお願い致します。

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