借地人、借家人に補償のない用地買収を最高裁が容認
自治体法務・政策法務 最高裁は、19億円もの用地買収事案で、その用地上に600台以上のパーキングを経営していた借地人に対する補償交渉を一切することなく、なお借地人が現に事業を経営しているにも関わらず無補償で所有権者から、当該土地を買収し、更地として移転登記する行為(契約とその履行)に違法性はない、とする判決を昨年末に下しました。
今後、借地人、借家人は、彼らが知らない間に地主や大家さんによって土地や建物が売られても仕方がない、という判断です。
最高裁では高裁判決を維持する、いわゆる三行半の判決ですので、高裁判決の内容が決定的に重要になります。
これまでの用地買収の大原則と実務を根幹から揺るがす大きな影響をもつ判決です。財政危機の折、自治体は補償基準によらない安い価格で土地を買い上げることが可能になるかもしれませんし、逆に、コネのある有力者には私法契約とういことで超高額での買い取りも可能となるでしょう。他方で、借地人は居座ることが可能であれば占有権を理由に用地買収をした自治体に対して居直ることも可能ですし、弱者であれば無補償で追い出されます。借地・借家人で事実上強い立場にあれば地主や大家に超高額の立ち退き料をふっかけることも許されることになりそうです。このように、「私法契約」を理由とする自由を認めた判決の影響は、これが全国での実務の原則になっていけば、きわめて大きなものとなるでしょう。
補償基準の根本的な書き換えが、国のレベルでも、自治体のレベルでも必要になるでしょう。
今回、被害者である当事者の方により、ブログが開設されたようですので、事案の影響の大きさからして、とりあえずご報告をしておきます。
全国で用地買収をされている自治体職員、国家公務員、あるいは政府関係法人、地方の土地開発公社の方などは多いと思いますので、ご意見もうかがいたいと考えています。
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