弁No.105 阿久根市長に負けない法無視主義?
弁No.105 全国的にはどの程度話題になっているかわかりませんが、鹿児島県阿久根市長の事件(?)、行動(?)、九州では相当に報道されています。
ここ数日のところでは、3月議会の傍聴席から、「一部報道機関 退席を」とか、市幹部に議会での答弁を禁止するとか、よく思いつくことができるな、というアイデアがいろいろ。
ご本人の主張のうち、ごく一部に限ってみれば、正論といえるものもないわけではないですが、全体を見ると、かなり度外れているようです。
最大の悪い功績は、裁判所の判決の無視でしょう。
彼のこの行動により、懲戒休職処分を受けた職員が、裁判所での判決で勝利し確定しても、職場に戻れない、給与も支払われない、休職処分が過ぎても役所で勤務することさえできない・・・。改めて懲戒求職期間中の給与の請求を民事裁判(それとも、行訴法の当事者訴訟? まさか・・・)でやっているようですが、今までの公務員の俸給請求の実務に馴染むものなのでしょうか。給与支払いの訴訟までしなければならない、というのが、現在の行訴法の仕組みの正常な結果なのでしょうか。そもそも、公務員の不利益処分が取り消されて確定し、その後、さらにいくつもの裁判を起こさなければならない、そうしたとしても実質的には暴君に法的効果があるかどうかわからない、という悪例を次々と作ってくれているようです。俸給は、役所の物品か銀行口座への差押えでカタが付いても、職場へ実質的に戻れない、となると、リコールをして市長を変えるしかないという政治的手段。そうなれば、法的手段はほぼ完全に無視されたに等しいのでは。
この裁判無視の傾向は、すでに波及しているようです。
長崎県立大学教授懲戒処分事件も、裁判所が出した懲戒処分を受けた教授に対する仮の給与支給決定を遵守することなく、強制的な差し押さえ手続にまで発展しました。その流れについては、こちら。
仮処分を出した長崎地方裁判所とは別の長崎地裁佐世保支部が「債権差押命令」を送達した後、さすがに、理事長の椅子とか、幹部の執務用机、公用車まで差し押さえられたら大変と考えたのか、ギリギリのところで往生際悪く「任意の支払い」をしたようです。これも、阿久根市長にならった例の1つなのか、裁判所の決定が、ある意味で、コケにされている例でしょう。
執行手続に要する費用・手間(改めて動き回って債務者や差押先の登記簿を取ったり、書面を作成したり。緊急性があるから事務職員も大変です)は、こういう差押え手続でも、小さくありません。結果的には、被害者側が実質的に負担することになります。こういう嫌がらせも、「抗争」の一手段と考えているのでしょうが、いやしくも「大学」が執る行動ではないような気がします。
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