弁No.106 <識字率> と <識法率>
弁No.106 日弁連会長選挙では、もう弁護士が過剰になっているということが、潜在的立候補予定者であった高山俊吉弁護士も含め、3名の実質的候補者の中で、一致していたと言っていいでしょう。司法試験合格者3,000人という数字は、全員が否定、それどころか、半減政策という点では主要な争点ではなくなっていました。ロー・スクール教員という立場から見れば、とても困った事態です。
今、ここでは、会長選問題、ひいては、日弁連の路線のあり方については触れないことにしますが、本当に弁護士がすでに余っているのか、市民の手の届くところに弁護士がいるのか、という点については、大いに異論があります。
県庁所在地でも、必要な専門的知識をもった弁護士が見つからない、という事態にも遭遇します。「これは」、という能力のある弁護士は、そのほとんどが、県庁、市町村役所・役場、大手地元金融機関、地元製造業、政界関係者自身、あるいはそれら人々の関連組織・団体などの顧問を務めており、これらの機関が全部関わっているような複雑な事件になると、「利益相反」事件となり、結局、地元には弁護士がいない、ということが起きてきます。これは、弁護士がそれなりにいるはずの県庁所在地でさえこうである、という例です。
他方で、弁護士がほとんどいない地域でも、そして、弁護士が多数いる地域でも、そもそも,住民は、ある問題が「法的事件・法的問題」と理解できないで、ただ、「困っている」ということもたくさん起きています。
私は、この、問題を法的な問題として認識できるかどうか、認識しているかどうか、という比率を、「識字率」にならって、今後、「識法率」ということにします。識法率の低さから判断すれば、弁護士の数は全然足りず、弁護士会は、住民や中小企業などのために、識法学級を広げる必要があると思います。
法務教育、法教育は、そうした論点に向かわなければならないと思っているのですが、今は、良くも悪くも裁判員制度に目が向きすぎているような気がします。
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