行政・自治No.120 地方議員の海外視察って、そんなに目の敵になるのか?
行政・自治No.120 今日、ある新聞(西部本社版)のトップページに、福岡県議会が「海外視察費 廃止も検討」している、という記事がありました。
その記事の末尾で、市民オンブズマンの代表は「今時、現地に行かなければ絶対に得られない情報がどれほどあるのか、説明が必要だ。全国の地方議会で海外視察は廃止の流れにある」、とコメントしています。
冗談ではありません。現地の自治の現実を知らないから、日本でトンチンカンな議論も多いのです。外国の地方自治の実態など、ほとんど知られていません。条文を読めばわかるはずの「地方自治制度」でさえ、しっかり紹介されているわけではありません。研究者は、今、調査に行きたくても旅費や調査のカネがありません。研究者にあっても調査に行ける人は予め結論を持って海外調査に臨んでいる場合も皆無ではないでしょう。真の実態調査はまだまだ絶対に必要です。
議会の海外視察が無駄、と言われるのは、任期中の割当制度などもあって、「行くに値しない人」が行って、旅行社に報告書を書いてもらったり、インターネットから報告書を「引用」したりしていたりすることが問題なのです。「行くに値する議員」が出たときの調査さえ、概括的に否定するのは議会自身が、この時代に語学力もないことまで含めて自らの能力の否定をするに等しい行為のように見えます。
今こそ、海外の自治の現実をしっかり自分の問題意識で、現地語で討論し、批判的に学んできて欲しいものです。制度は、いったん廃止されると復活は困難です。もっと、本質に迫った政務調査費論を展開しなければ、究極のところ、議会不要論になっていきますが、それは大多数の今いる議員を見て言っているに過ぎないのです。
あるべき「議員像」、あるべき「議会像」を抜きにした議論は、非常に危険であると思います。
議員の視察の法的手続論などと、視察そのものの是非、現在の議員に視察能力があるかという問題は、厳密に区別して論じて欲しいものです。
政務調査費や役所の交際費を叩けば良いというような問題意識の浅さも問われるのかもしれません。
福岡県議会は、しっかりして欲しいものです。何なら、政務調査費を使って、レクチャーくらいさせてもらってもいいですが。たまたま、政府の地方行財政検討会議で議論されている「住民の縮図」という語を使って、「「住民の縮図」と地方議会」という近刊の随想の校正を終えたところです。
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コメント
そもそも政務調査費の扱いが議論されること自体情けないことです。
民主政における議会の役割をいかに自覚していないか。
議員たるもの(国会議員含め)、政治学、基礎法学、憲法(できれば経済学も)くらいは最低限勉強しておくべきです。
海外視察取りやめというのは、海外視察=遊興というイメージを固定化させる自虐行為。
一体何を考えているのか・・・。議会人の誇りはないのかと、本当にため息が出てしまいます。
木佐先生は、福岡県議会に乗り込んででも「説諭」すべきです(笑)。
投稿: from nagatacho | 2010.11.08 15:26
“from nagatacho” さん、コメント、有り難うございました。「永田町」ですね。私と名刺交換をしたことのある方でしょうか? 本当に永田町からの発信ということであれば、私の意見にとって貴重な賛同者であり、有り難いことです。
10日ほどもすれば、本文の「「住民の縮図」と地方議会」も、掲載紙などをご紹介できるでしょう。営利紙なので、そのままのPDF化などは無理かもしれませんが。
福岡は8人が立候補している市長選の真っ最中。県議会の関係者はブログなどお読みになる時間などないでしょう。
投稿: きさ | 2010.11.08 16:00