« アラベラ·美歩·シュタインバッハー 2011年公演 プログラム | トップページ | 介護帰省パス 日本航空(JAL)とのやりとり  第3報 »

2010.12.24

法無三角形

Dsc_2260_r 出雲なごみの里(写真は今回処分対象となっている島根県出雲市の施設の全景。2010年8月撮影。面会のため施設内にも入りましたが、長期間にわたる県の調査が続いているとは思いもしませんでした。 本ブログ → 参照)のHPによれば、現在の施設許可取消事件の進行状況は次のようらしいです。

 2010年12月19日付の毎日新聞の島根面によれば、島根県庁高齢者福祉課より「聴聞会で新たに出された資料が膨大で、作業に時間がかかっている。できるだけ速やかに結論を出したい」とコメントがあったと言います。そんなはずはありません。聴聞手続前に長期間にわたり十分な調査していたはずですが、聴聞手続の後に再度、施設創設以来の全資料を県庁に持ち帰り、全点をコピーして戻したと施設から聞いています。聴聞手続違反でしょう。一事不再理原則違反も考える余地があります。

 プライバシーの固まりである全資料を県庁にコピーのために提供する施設側の対応にも唖然です。取消処分を目前としていて全国的な注目を浴びているというのに、弁護士も誰も付いていないのですから、お上のすることに従ってしまうのは仕方ないかもしれません。

 他方で、山陰(島根・鳥取)の地元紙である山陰中央新報の島根面には、12月9日付で、【なごみの里 厳正処分 県療養型施設連絡協議 架空請求あれば】「2002年発足任意団体、県内20病院の看護部長らで構成、県療養型医療施設看護管理者連絡協議会(郷原早苗会長)が県に対し厳正な処分を行うよう要望」、12月14日付で、【介護施設運営に厳正な処分を NPO法人、県に要望】「県内で介護施設を運営する8NPO法人(松江・出雲・浜田・雲南・斐川、代表として「ほっと大東」小山義弘事務局長)が県に対し、公平・公正な処分を要望」したということです。

 両組織とも、「架空請求・不正請求があれば」処分を要望という慎重な言い回しのようですが、請求の仕方を始めとして、今回の不祥事に似たようなことに覚えのない介護組織は本当に皆無で、もしあれば、直ちに取消処分を受け入れるという自信があるのでしょうか。ミスは、敢えて探せばどこかにありそうな気がします。大学でもそうですから、これらの強気の発言は私には不思議です。要望書の原文を見ていないので何とも言えませんが、このように事実認定に何の権限もないものが公式に処分権発動を要請する、しかも、その要請者が介護施設を運営するNPO法人とあれば、いつ我が身がそうなるか(理論的には)分からないのに・・・と思ってしまいます。今は何かの力に守られている立場だから、権力発動を求めているのでしょうか。

 一体、これらの組織は、自分たちが受け入れることができず、行き場所のない要介護者を「なごみの里」に委ねていながら、(施設の許可取消)処分を求めるのであれば、今後、処分が実際に行われたときに行く場所を失う要介護者は、これらの施設に行くことになるでしょう。これらの施設は、受け入れたいのでしょうか。どの介護施設でも断られたような方を「なごみの里」だけが受け入れていただいたのですが。自分たちは受け入れることはできないが、「介護制度の谷間」は、放っておけ、とでも主張したいのでしょうか。

 広田まゆみさんが書かれているように、国に向けて、制度改正などを要求すべき課題が根本にあるのに、何か、向かう方向が違っているようにみえます。 → 広田さんのブログ
 同ブログ「凸凹日記」の11月以降の記事もご参照を。

 (1)役所、(2)被処分予定施設、(3)処分要求組織、この三角形のいずれもが法的観点に立っているようにはほとんど思えません。法無三角形が支配するこういう風土に耐えられない人々は、続々と故郷を捨てて出ていくのかもしれません。

 以上は、問題の施設にお世話になっている者の親族という立場からの、ひとつの見解です。


 この件につき、毎日新聞社松江支局長による2010年12月20日付の「支局長からの手紙」があります。


 g-note(Genmai雑記帳) という方のブログにある 2010年11月18日2010年12月21日の記事は、すごくまっとうなことが書いてあると思います。これも、是非、ご参照下さい。

 上記、毎日新聞 も g-note(Genmai雑記帳) も、個人的関係は一切ありません。

|

« アラベラ·美歩·シュタインバッハー 2011年公演 プログラム | トップページ | 介護帰省パス 日本航空(JAL)とのやりとり  第3報 »

自治体法務・政策法務」カテゴリの記事

コメント

出雲市民です。

気になることが書かれていましたので、質問をさせていただきます。

>どの介護施設でも断られたような方を「なごみの里」だけが受け入れていただいたのですが。

とありますが、本当にどの介護施設も受け入れを断ったのでしょうか?
それが事実であればとんでもないことで、出雲市に住む人間として不安に思います。

また、受け入れを断られた理由もお聞かせいただければありがたく思います。

投稿: タニモト | 2010.12.29 15:53

タニモト様、コメント有り難うございました。谷本様は、実名であれば、ひょっとして私ども一家の知人でいらっしゃるかもしれませんね。ある谷本一族様とは親しくさせていただいておりますし。
 実は、このコメントについては、1月6日に気づきました。失礼しました。本ブログには、普段は年間に数件しかコメントがないものですから、後の日の記事に対して先にいただいたコメントよりも下にコメントがあるとは思っていませんでした。
 お尋ねの件、現在、調査中です。お尋ねになりたいことは、私の親族のケースような60歳未満の「看取り」患者のことではなく、一般的な高齢者のことでしょう? 本当は、このブログ記事の「なごみの里」問題の全体をお読みになれば、話題を限定して書いていることをおわかり頂けると思います。いずれ、まとめてお答えしますが、出雲市・松江市でも、お金がたくさんあれば、また、2年くらい待てば、高齢者用の介護施設に入ることは可能のようです。私どもの場合には、病院から出て行くように、と言われて2週間以内に収容先を探さなければならなかったのです。制度の谷間にある終末期患者である、ことが前提になっております。今、両親のいずれかが、2年後には入所できるように手配を始めようとしているところです。それまでは、家族帰省介護、遠距離操作介護、呼び寄せ介護のいずれかになるでしょう。

投稿: きさ | 2011.01.08 18:25

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 法無三角形:

« アラベラ·美歩·シュタインバッハー 2011年公演 プログラム | トップページ | 介護帰省パス 日本航空(JAL)とのやりとり  第3報 »