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2015年6月の記事

2015.06.30

行政・自治No.176 木佐茂男『国際比較の中の地方自治と法』(第8回)

Dsc_3694_rDsc_3689_rDsc_3685_rDsc_3696_rDsc_3697_r911004drkeller行政・自治No.176第5章の解説(書き下ろし版)を掲載します。

  解説にも書いたとおりの事情でして、本書の現物である『ドイツの自治体連合組織』は、国内の全図書館を探しても所蔵数10冊以下ではないと思います。個人でも所蔵されている方は、ほとんど皆無に近いでしょう。

 一般の方々にはあまり馴染みのない言葉かもしれない「自治体連合組織」についてのドイツ研究です。「自治体連合組織」とは、日本では、「地方六団体」のことと考えていただいて結構です。

 日本の自治体連合組織については、現在でもそうですが、真実を書くわけにいかないため、無味乾燥な「ドイツの紹介」にとどまっているようにみえるでしょう。ただ、この研究は、解説でも書きましたが、北海道にいたからこそ、そして、人のつながりが非常にうまくいっていた時期だったからこそできた研究でした。

 この章ができるに至った前後の事情は、本章の解説をご覧ください。

 これまで尋ねたドイツの自治体連合組織は、全国規模、州規模のものを含めて15箇所をくだらないでしょう。

 写真は、直近で行った2011年訪問時のバイエルン州町村会の部長であるケラー博士に焦点を当てて載せます。20年ぶりの対面でした。1991年当時の写真(最後のもの)は、拙著『豊かさを生む地方自治』(日本評論社、1996年)148頁の〔写真165〕にあるものと同一です。ケラー博士は、1996年発行の日本語の本を事務局の女性職員らに見せて、ずっと前から日本に紹介されていたんだぞ、と自慢げでした。
 このケラー博士は、法律家としてのスタートが行政裁判官であり、ミュンヘン地裁で、ミュンヘン空港事件を担当したこともあり、当然に著書や法令集編纂などの執筆活動もされています。こうしたところが、日本の自治体連合組織(のスタッフ)と大きく異なるわけですが。


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2015.06.29

行政・自治No.175 木佐茂男『国際比較の中の地方自治と法』(第7回)

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行政・自治No.175 こんな馬鹿なことをやっている法律研究者がいてもいいでしょう。外国の同一自治体の定点観測です。

20年前より自治体は美しくなりました、いや、荒廃しきっています・・・と言ったところで、文字で書いてもほとんど理解はしてもらえません。一目瞭然という言葉もあります。

これは、ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州シュヴァルツヴァルトの山間地にある人口1500人ほどのゼーバッハ村です。同一の役場と農家、民家を1991年と、その20年後の2011年に撮影したものです。いずれの建物も、左が1991年、右が2011年です。ゼーバッハという村は、ここ(地図)です。地図を次々小さくしてご覧ください。そして、航空写真もモニターの左下をクリックして見てください。 この村の20年間の変化については、全国町村会『町村週報』に「20年経って光り輝く村」として書きました。→  『町村週報』リンク  

 日本の山間地の村であれば、この20年間の荒廃は相当なものでしょう。役場の建物も手入れが行き届いているでしょうか?

 論より証拠。「国際比較」って、文字資料や学説・法制度の変化の比較だけでは、何も実感としては伝わってきません。

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 今回は、「地方自治基本法」という未だ存在しない法律名をタイトルにした原稿です。 ここで、第4章の解説(書き下ろし版)を掲載します。 

 地方分権改革の内容の是非とは別に、現行法である地方自治法が全471条(2014年11月1日現在)もある大部な法律であることから、地方自治の本当の基本部分だけを簡素な法律にしてもいいのではないか、という観点から書いたものです。この「解説」には書いていませんが、依頼原稿であったため、一から勉強して書いたものです。

 解説末尾にも書いていますが、膨大な条文を抱える現行・地方自治法は、いずれ大幅な見直しが不可避となるのではないでしょうか。

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2015.06.28

行政・自治No.174 木佐茂男『国際比較の中の地方自治と法』(第6回)

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行政・自治No.174 表紙カバーに使った写真のほとんどががシュパイヤー市内で撮影したものだったので、今日の写真はシュパイヤー市法務部が入っている庁舎(左)を挙げておきます。1階は、洋服店などがありました(2005年当時)。航空写真でご覧ください。中央部にあるマクシミリアン通りというところにあります。法務部の住所の写真まで挙げたのは本庁舎(右)とは異なる場所にあることを示すためです。本庁はこの航空写真で見ると、同じ通りの少し右側(東側)にあります。右側の本庁舎では、かつてシュパイヤー行政大学院のピチャース教授と共催で日独シンポを開催したとき、市長招待の歓迎レセプションがあり、市長らの前で日本側代表として謝辞を述べたことがあります。

 だいたいに、市役所の法務部は、本庁舎には入っていないところが多かったです。ミュンヘン市法務部は、あの有名な繰り人形が回る本庁舎から少し離れた市場の中の小さなビルの2階にあります。フランクフルト市でも本庁舎とは離れたビルに入っており、さらに、ヘッセン州の州都のヴィースバーデン市でも同様でした。役所の中で法務部門は政治の喧噪から離れた場にあってよいという発想です。ドイツの連邦憲法裁判所を含む6つの連邦の最高裁判所が(歴史的な理由もあってですが)全て、首都のベルリン(かつてはボン)にないのとも似ています。

 今日は、第3章の解説(書き下ろし版)を掲載します。

 これは、いわゆる地方分権改革元年(2000年)に発表した原稿です。

 00jichitoseisakkuそこで、ちょっと品のないことですが、書かせて下さい。

 所収されているこの第3章論文は、私が人前で「論文です」と言える最後のものと言っていいかと思います。言い換えれば、これ以降、15年ほど、もう論文を書いていないことになります。

 本論文は『自治と政策』(北海道大学図書刊行会・刊行)で、北海道大学法学部創基50周年を記念して企画されたシリーズの第5巻です。私は、この第5巻の編集責任者とされ、企画から原稿集めまで全て私が行い、その証拠にドイツの教授の書き下ろし論稿の翻訳ものを1本入れて、自ら2つの原稿を用意したのです。ですが、2000年4月1日付けで私は九州大学に転勤しており、発行されたのは2000年6月。その発行時点で私が北海道大学の教員ではない、という理由から急遽、山口二郎教授を編者にするという当時の法学部執行部(発行時点では法学研究科執行部)の判断で編者からはずされた、という意味でも思い出深いものです。同書内の各章解説は、山口教授の手になります。個人的に山口教授への恨みなどは全くありません。ただ、当時の執行部の判断には、今でも私の徒労感がついて回ります。

 この論文の中で書いている懸念は、かなりの程度、当たったと思っているのですが、それ故に、分権改革反対派からも分権改革推進派からも嫌われる論稿になったのでしょう。


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2015.06.27

行政・自治No.173 木佐茂男『国際比較の中の地方自治と法』(第5回)

Dsc_0609_rDsc_0597_rDsc_0599_rDsc_0596_r行政・自治No.173 4回にわたって拙著の紹介を「はしがき」や「解説」も露骨に(?)掲載して行ってきました。この間の反響・コメントとしては私信が1通あったのみです。ある程度、やる気を失ってしまい、あっという間に20日以上が過ぎました。

 これで放置してもいいのですが、各章の解説を掲載すると一応書いた以上、続行することにします。

 その唯一いただいたコメントは、この本の全容がわかるように「目次」を載せてはどうか、というご提案でした。なるほどです。そこで、章と節の段階までの「目次」を掲載することにしました。

 → 目次(PDF) 

 今日の写真(各写真は拡大可)は、第5章で詳論するドイツの多数の自治体連合組織のうち、もっとも規模が大きく、本部がドイツ統一後、ケルンからボンに移ったドイツ都市会議の建物と入口ホールから2階を見上げたところにある加盟都市の紋章をステンドグラスにしたものです。大きいために全体は写せていません。ドイツ都市会議は、統合前からケルンとボンの両市に本部機構が分かれて、以前から双方の建物をそれぞれ数度訪問しています。週末には、このロイター・ハウス(本書第5章解説参照)がある「6月17日通り」は、ベルリン最古ともいわれる蚤の市になります。この都市会議が入っている建物は、「エルンスト・ロイター・ハウス」という名称ですが、「エルンスト・ロイター」については、この語を入れてWEB検索をして下さい。

 ちなみに、この拙著、CiNii(国立情報学研究所のデータベース)で検索しますと、2015年6月27日現在、全国の34の大学に所蔵されています。旧帝大といわれる大学では、東北大にのみ(九大は私の寄贈分を所蔵)所蔵されているようです。
 かつて1996年に出版した『豊かさを生む地方自治』(日本評論社)は、現在、全大学図書館(高専、短大を含む)で、計225冊所蔵されていますが、今回の『国際比較の中の地方自治と法』は、60冊、せいぜい70冊を超えればいいほうでしょう。大量に在庫が残りそうです。


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2015.06.05

行政・自治No.172 木佐茂男『国際比較の中の地方自治と法』(第4回)

Dsc_1144_rDsc_1166_r行政・自治No.172 今回は、表紙カバーで使われている藁づくりの大きな人形(?)です。ヘッセン州の首都ヴィースバーデン(この市は、別の州であるラインラント=プァルツ州のマインツ市と二重都市を形成しています)で、秋の収穫祭の時期に撮影したものです(2005年)。

 そして、ドイツでは、選挙はかなりの日数をかけて行われる郵便投票が一般的ですが、選挙日当日の投票もあります。その後、日本風に言えば即日開票が行われるのですが、こうした選挙管理事務は住民自身が行います。写真の女性は、私が繰り返し訪問研究員として滞在したシュパイヤー行政大学院のピチャース教授の講座で、2005年当時に助手をしていたカトリンさん(その後、博士号を取得したはず)です。彼女の話を聞いて驚きました。彼女は、大学生の頃から、投開票事務を一住民として居住地で行っている、というのです。開票を自分達で行い、その結果を電話で選挙管理センターのような役所の一室に報告して終わり、だというのです。

 まさに、選挙管理も、住民らのボランティアによる「自治」なのです。

 選挙運動自体にも、ほとんど法的な縛りがあるようにはみえませんでした。もちろん、宣伝カーでがなり立てるような選挙キャンペーンは一切なく、ポスターを目にすること以外には、ほとんど選挙の雰囲気を感じることはありません。それでいて、村や町の居酒屋(Kneipe)に行くと、シュタムティッシュという地元の人優先のテーブルがあって、そこいらを中心に指示政党の枠を超えて議論をしているのです。

 日本では、「生涯、選挙や政治にはかかわらなかった」ことを誇りにする人がかなり多いのですが、政治=不潔、というイメージをどう払拭できるか、何をしたら政治=美しいこと、になるのか、大いに思案すべき事柄のように思えます。

 今日は、第2章の解説(書き下ろし版)  です。
 
 かつて、2005年のドイツ滞在中に書いたドイツの選挙や子どもたちの政治参加への配慮に関する記事に、リンクをします。

2005.08.29 行政・自治No.22 静かな選挙と熱い選挙(その1) 

2005.09.04 行政・自治No.23 静かな選挙と熱い選挙(その2)

2005.09.05 行政・自治No.24 静かな選挙と熱い選挙(その3)

2005.09.13 行政・自治No.25 静かな選挙と熱い選挙(その4)

2005.09.14 行政・自治No.26 静かな選挙と熱い選挙(その5)

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2015.06.04

行政・自治No.171 木佐茂男『国際比較の中の地方自治と法』(第3回)

Dscf0447_rDsc_1127_rDscf0446_r行政・自治No.171 これから、この本の各章の解説を「チラ読み」の対象にしたいと思っています。その際、少しは、各章の主題と関連のある写真を載せたいと考えますが、何しろ、過去の地方自治関連の写真は30年分以上に及び、探すのは大変です。

 今日の関連写真は、本著のカバー表紙に使われているセピア色の写真の現物(その2)です。前回の(その1)に当たるのは、街路標識でしたが、今回は、ドイツの国会議員の選挙の模様です。シュパイヤー市内で、各政党がテントの下で、政策のアピールをし、訪れた子どもたちには風船を、大人にもボールペンなどを渡しています。それが、選挙違反だの買収行為だのという議論は聞いたことがありません。

 次回は、投開票の管理を誰がしているか、書くことにします。要するに、選挙の実態が異なれば、その国の民主主義のあり方や、民度の違いも自ずと明らかになってくると考えています。日本の地方自治制度を考えるときに、まず現行の選挙制度の存在をすべて所与のものとしてスタートするのはかなり問題だと思っています。

 今日は、第1章の解説(書き下ろし版)  をアップロードします。

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2015.06.03

行政・自治No.170 木佐茂男『国際比較の中の地方自治と法』(第2回)

Dscf0213_rDscf0214_r行政・自治No.170 表紙・カバーに使った写真のオリジナルです。各写真の説明は、本書カバーの裏面に書いています。 → グーグル地図です

 あえて、玄人好みになるように、本書の第6章で出てくるドイツの19世紀初頭のドイツの近代的地方自治制度の創設者と言えるフライヘル・フォン・シュタインの名前を付けた街路、そして、ドイツの行政法学を初めて体系化したと言われるオットー・マイヤーの名前を付けた街路の標識を載せました。かなりマニアックなものなので、話題にしてくださる研究者は10名程度(?)かな、と思います。この2つの街路(シュトラーセ)は、私が足繁く通ったドイツ・ラインラント=プァルツ州にあるシュパイヤー行政大学院の敷地の東側と南側にある道路が囲んでいる感じです。

 このグーグル地図を拡大して見ると、両街路の名前が、この大学院大学の東側と南側の道路に付けられていることがわかるでしょう。ドイツには、人名を着けた街路・道路が非常に多く、アデナウアー通りなどは、一体、いくつあるのか見当も付きませんが、調べたかぎりでは、この両名の名前を付した道路は、シュパイヤー行政大学院の敷地を囲むこの2本しかないようです。

 今日は、 「はしがき」(後半) を、アップロードします。
 
 今後、1冊でも読んでいただけるように、という趣旨で、各章の書き下ろし解説(2014年秋までに書き上げたもの)を、少しずつ、アップロードして、「チラ読み」をしていただこうか、と思っております。この点も、出版社のご了解を得ております。第3回目に続きます。

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2015.06.01

行政・自治No.169 木佐茂男『国際比較の中の地方自治と法』の出版について

150313kokusaihikakujichihouhashigak行政・自治No.169 まぁ、発刊後ほぼ3か月も経ち、今さら、という感じですが、この3月中旬に自分の論文集『国際比較の中の地方自治と法』という本を日本評論社から刊行しました。奥付での発行日は2015年3月30日付けですが、実際には2週間程度前に、店頭に出たはずです。とは言っても、印刷部数が超少数ですので、法律系の本が置いてある専門店でも1冊か2冊陳列してあればいい方でしょう。九大の法学部などがある箱崎地区というところの生協文系書店には2冊入荷。この3か月で「1冊」だけ、売れたそうです(本日、2015年6月1日に生協に確認)。購入者は多分、私が知っている人ではないかと推測しています。残った1冊は、棚でほこりをかぶっているのでしょう。
 
 税込みで9,180円というとんでもなく高い本になりました。1,000冊でも印刷できるのであれば、7~8千円台になったのでしょうが、チト無理な話でした。

 で、出版社のご承諾も得まして、1冊でも掃けるように宣伝していいということになりましたので、まずは「はしがき」を、このブログに、それも、セコイことを承知で、数回に分けて載せるという次第になりました。

 第1回目、 「はしがき」(前半) です。

 内容を読んでいただければ、意固地になって論文集にまとめた気持ちの一端はご理解いただけるかな、とも思いますが、もとより本音のことを全部書いているわけではありません。「はしがき」も、全4頁という制約がありましたので、謝辞もろくろく書けてはおりません。

 いろいろなことが起きて、私の主要な研究分野であった〔A〕地方自治(法)と〔B〕司法・裁判制度、行政争訟の分野について、ともに、九大赴任後、とくに2002年頃からは、ほぼ全く勉強していません。研究しても、発表しても、ある程度の実践をしても、ほとんど意味がないことを十二分に知らされたからです。
 したがって、この論文集は最新のものでも、おそらく2002年の第4章ではないか、と思います。そういう意味で、最新論文が今日現在からは13年も前のものでして、ことに、第6章に至っては37年も前、27歳のときに発表したものです。ただ、この論文集の中では、一番重要なものだと考えています。

 今後、いろいろなエピソードを交えて、全6章までの新規「解説」を掲載していくことにします。

 〔今後、途中で他のテーマについての記事も入れますが、しばらく、宣伝を兼ねて、写真付きで本書の紹介を続けます。品のない宣伝行為であることは自覚しておりますが、ご容赦願います。実は、私の最初の本『人間の尊厳と司法権』も、資産課税の対象からはずすため倉庫で保管されていた200冊が裁断処分されたことがあり、出版社に今回またご迷惑をかけるようなことはしたくないのです。私に直接、ご連絡をいただければ、著者割引プラス送本料でお送りできるかもしれません〕

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