日本の行政訴訟執行停止件数
日本の行政訴訟でも、既成事実ができてしまわないように、執行停止という制度があります(行政事件訴訟法25条)。
ドイツであれば、原告が違法と考える行政処分(営業禁止処分とか、資格の停止処分とか)があって、これを裁判所で行政訴訟(取消訴訟)という形で争うと自動的・原則的に執行停止となります。税金の賦課処分などは、法律の上では、自動的な執行停止はないですが、運用上は、ほとんどのケースで執行停止がなされています。これは、今春発刊の『司法改革と行政裁判』の第5章Ⅴ(第5節)で、ドイツの連邦憲法裁判所判事が自ら語っていることでもあり、私も従来、論文などで書いてきました。
ところで、日本。人口1,000万人当たりで何件の執行停止が裁判所によって認められているか、というと、現行法の行政事件訴訟法(1962年=昭和37年制定)は、当初、3件だけでした。1,000万人当たりでいうと、たったの0.31件でした(1963年)。条文の上では要件を緩やかにしたのに、裁判官は停止要件を文字通りに読んで、厳しく適用したのです。
2004年に、執行停止の要件がさらに緩和されました。執行停止を認める決定が少し増えたのですが、最高に増えた年をみても始審の段階で、人口1,000万人当たりでたったの9件です。抗告審で逆転したのもあるでしょう。
行政救済制度というのは、私には、いつも行政機関を救済する制度のように思えて仕方がありません。続きは、最終講義の際に、少しだけですが、アジア諸国との比較しつつコメントすることにします。
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